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羽毛布団の起源



狩猟時代の人々は、捕獲した獣皮や毛皮をを体にまとったり、敷物として用いて、睡眠をとっていたようである。もちろん人間は古くから食料として鳥を獲っていたので、羽毛の保温性に人間はかなり古くから眼をつけていたであろう。

しかし、1枚の羽毛布団を作るには、3つの問題を克服せざるを得なかった。
 

古代エジプトの壁画1つめの問題は、羽毛は1本づつバラバラだから、それをつつむものがなければ布団にはならない。毛皮はそれだけでも保温具となるから羽毛をつつむ必要も無かったろうし、その実例も知られていない。とすると羽毛をつつむものは布ということになる。布の起源はわからないが、すでに紀元前5000年前のエジプト文明において紡織技術があったようである。
 

 

羽毛布団のキルティング2つめの問題は、羽毛を布団として使うためには、2枚の布のあいだに羽毛を容れるということだけでなく、その羽毛が偏ってしまうことなく一様に分布するようにしておくことも出来なければならない。そのための技法がキルティングだが、それは、約2000年まえの中国で植物性材料を用いてはじまり、シルクロードを通って北ヨーロッパに伝わったようである。

 

3つめの問題は、銃火器の発明以前には鳥を大量に獲ることはおそらく離島の集団繁殖地でしかできなかった。しかし、海鳥の羽毛には、その防水性を高めるために鳥が尾脂腺から油脂を塗りつけているので、独特の臭いがあって利用しがたい。淡水性でこの臭いの少ないのはカモ類であるが、このカモ類は集団営巣をするものがすくない。 
 

ケワタガモ北極海周辺の河や湖に生息する、ケワタガモ(カモ目カモ科)という水鳥は、巣をつくる時にメスが胸の羽毛を抜いてそれで巣の内装をするという習慣がある。その巣を集めたら羽毛を収集することができるが、ケワタガモも集団営巣しないのでその巣を大量に発見するのは難しい。だが、その一種オオケワタガモだけは集団で営巣する。北大西洋沿岸の離島で集団で繁殖するこの鳥の巣に始めて目をつけた人々が、人類で始めて羽毛布団に寝たと考えられる。

 

極寒で荒れ狂う波の中でこの離島に初めて上陸できたのは、高い造船技術を持っていたヴァイキングであったろう。事実、9世紀にノルウェーの統一を実現したアーサ女王の墓から羽毛布団が発見されている。

 

              ノルウェーの地図           復元されたヴァイキング船 
 

最近の研究で、ヴァイキングは海賊ではなくて優れた商人だったことが解明されてきた。彼らは、ヴァイキング船を巧みに操り、羽毛を交易していたのではなかろうか。9世紀頃デンマークのラドビーの族長の墓船や豪族の墓でも羽毛布団が発見されている。

 

すでに、9世紀のころには、北ヨーロッパで羽毛布団が広く普及していたことがこれらの事実からたしかめられる。英語の“down”は、古いノルウェー語の“duun”を語源として持っている。